脊椎センター

更新日:2021年01月12日

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取り扱う病気

脊椎脊髄疾患全般を取扱います。比較的頻度の高いものとして下記の疾患があります。

  • 脊柱管狭窄症(腰・頚)
  • 椎間板ヘルニア(腰・頚)
  • 頚髄症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 腰椎分離症・すべり症
  • 脊柱側弯症
  • 脊柱後弯症(腰曲がり・首下がり)
  • 脊椎骨折
  • 脊椎・脊髄腫瘍
  • 癌の脊椎転移
  • 脊椎炎

診療方針について

  1. 似たような症状でも体の中の病態は患者さんによって異なります。
    まず、診察と検査によって、原因と診断をはっきりさせることが第一段階です。
  2. 次に、それぞれの疾患について、一般的な治療の選択肢を説明します。
    この際に、担当医の専門が手術治療であるからという理由で手術だけを勧めることはありません。受診目的が手術についての相談であっても、考えうる治療の選択肢をひととおり説明したうえで、どのような場合にどのような理由で手術治療が必要であるかを説明します。
  3. 現代医療の標準的な考え方と患者さんの自己決定権を尊重し、何を根拠として自分の治療を選択すればよいかを説明します。患者さんご自身で治療方針を決められない場合ももちろんあります。その場合には、個々の患者さんにとって担当医が最善と考える治療方針を提案します。
  4. 保存治療は、原則として、それらを行なっている医院や病院で受けていただきます。手術治療については、標準的な術式の中から最適と考えるものを選んで実施します。必要に応じて、診断や治療のため他科や他院へ紹介します。

 

内視鏡手術について

当センターは脊椎内視鏡下手術の認定施設として数多くの内視鏡下手術を行ってきました。
腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の患者さんのうち、本法が最適と考えられる方には脊椎内視鏡手術 を行なっています。

MED  内視鏡下腰椎椎間板摘出術

MEDはMicroEndoscopic Discectomyの略で、これは、約2センチメートルの皮膚切開で脊髄神経の圧迫を取り除くことができる新しい治療法です。従来法より術後の痛みがより少なく、ほとんどの患者さんが術後数日で退院可能となり、より早く日常生活に復帰できる利点があります。椎間板ヘルニアだけでなく一部の腰部脊柱管狭窄症の患者さんにも行える手術です。詳細は脊椎センター外来でおたずねください。

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FED 全内視鏡下椎間板摘出術
(PED、経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)

FED はFull Endoscopic Discectomyの略で、これまでPED(Percutaneous Endoscopic Discectomy)と呼ばれていた手術と同じものです。上記の内視鏡手術よりもさらに小さい内視鏡を用いて行うヘルニア摘出術です。皮膚切開は8㎜程度で、アプローチ方法も違うため、体への侵襲がさらに少なく入院期間が短く、早期退院が可能です。ただし小さな内視鏡で行ため適応となるヘルニアのタイプが限られています。現在のところ椎間板の変性が少なく、狭窄症を合併していない症例に対して行っています。
FED手術は局所麻酔でも可能な手術ですが、当院では患者さんの疼痛、不安の軽減のため全身麻酔にて行っています。日帰りでも可能な手術ですが、3-4日入院していただき体調に異常のないことを確認してから退院をしていただくことを基本としています。
詳細は脊椎センター外来でお尋ねください。

椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)

ヘルニコアは椎間板髄核の保水成分を分解する酵素であり、これを椎間板内に注射することで、水分を含んだ髄核のふくらみが適度に和らぎ、神経への圧迫の改善が期待されます。2018年に発売された薬です。

腰椎椎間板ヘルニアに対しては保存的治療(手術やヘルニコア以外の治療のこと)を一定期間行うことが標準的ですが、それにもかかわらず手術に至る割合は、軽症例の20%程度、強い症状を呈した症例の50%弱と推定されています。ヘルニコアの臨床試験では、ヘルニコアを使用していない場合は最終的に約20%の方が手術治療に至りましたが、ヘルニコアを使用するとそれが約10%に減少したとされます。

簡便な治療法ですが、定められたいくつかの制限があります。①靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニアに限られます。②腰椎椎間板ヘルニアによる排尿の異常や両下肢の麻痺がある場合にはヘルニコアは使用できません(手術治療が原則です)。③原則として20歳から69歳までの方に限られます。④過去にこの薬剤を使用したことがある場合には使用できません。⑤副作用としてアレルギーが起こり得ます。このため当院では1泊入院としております。

以上の他にも医学的な理由(不安定性を伴う椎間板など)でヘルニコア以外の治療法をお勧めすることがあります。詳細は脊椎センター外来でおたずね下さい。

経皮的後弯矯正術 (BKP) について

「骨粗鬆症に起因した脊椎椎体骨折」に対して、経皮的後弯矯正術:BKPを当院でも導入しております。

この手術は、骨粗鬆症にともなう脊椎の圧迫骨折をおこし、保存的治療を行っても治癒せず背中の痛みがとれない患者さんが対象になります。

本術式は、骨折した背骨の中で風船を膨らませ、潰れた骨をできるだけ整復しセメントを充填して固めることによって骨折部の安定化を図る手術です。傷跡は小さく、手術時間も短い低侵襲手術で、手術直後より著しい疼痛改善が期待できます。また、ほとんどの患者さんが翌日より歩行可能となります。

ただし、骨折した骨の数や形、全身の健康状態によっては対象外となる場合もあります。詳細は滋賀脊椎センター外来でおたずねください。img

脊柱変形

診療内容:成人脊柱変形・思春期側弯症・外傷後脊柱変形・その他の姿勢異常や脊柱変形疾患を取りあつかいます。

思春期側弯症

成長期の脊柱側弯症の原因はいくつかありますので、まず診察と検査を行って、診断を確定します。そのうえで、日本側弯症学会の標準的な診療方針に従って、必要な場合にコルセット治療や手術治療を行います。それぞれの治療の必要性は、原因疾患、脊柱変形の重症度、変形の進行速度、骨年齢により決まります。

成人脊柱変形

人口の高齢化とともに増加している脊椎疾患です。多くの場合、60歳台から80歳台にかけて少しずつ腰や背中が曲がってきて、立った姿勢を長く保てない、歩くと腰が曲がってしまい杖や押し車にもたれないと歩けない、体幹が前または横にゆがむ、腰がだる痛い、といった症状が進行します。脊柱管狭窄症を伴う場合には、殿部・下肢のシビレや神経痛が出ます。立ったときに腰が前方に曲がる腰曲がり症(変性後弯症)や、横方向に体幹が倒れるように傾く変性側弯症、両者が合併したもの、などがあります。「変性」とは、加齢に伴う変化や劣化が原因でおこる、という意味です。いずれも、進行すると、歩行や日常生活動作に支障が出るだけでなく、外見(身体イメージ)や精神的な健康をそこなう場合があります。
治療は、大きくわけて、保存治療と手術治療の二段階になっています。脊柱変形外来では、まず診察と検査により診断と原因を確かにしてから、個々の患者さんの症状の程度と希望に応じて、標準的な治療方針につき説明と相談をおこないます。変形や機能障害が著しい患者さんについては、根本的な治療を希望された場合に手術治療を行ないます。脊柱変形の手術は、姿勢を正しくし、痛みやシビレを改善して、歩行と歩容を改善することができますが、身体の可動性(柔軟性)は減少しますので、その長所欠点をよく説明したうえで患者さんに選択していただくようにしています。そのようにして矯正固定手術を受けられた患者さんのほとんどは、治療結果に高い満足を感じておられます。

骨折後脊柱変形

事故または骨粗鬆症が原因で背骨を骨折したあとに変形や不安定性が残った状態です。姿勢が悪くなるだけでなく、立位での腰痛の悪化、下肢神経痛やシビレ、歩行障害などの症状が出る場合があります。診察と検査で正確な診断をおこなったのち、保存治療と手術治療の標準的な考え方につき説明し、患者さんの希望を尊重しながら適切な治療について相談します。

脊椎骨粗鬆症

超高齢社会化した日本では、骨粗鬆症患者数が年々増加しています。脊椎骨粗鬆症に伴う脊椎の椎体圧迫骨折も増加の一途をたどっています。この骨折は治癒したとしても、痛み、変形、麻痺などの後遺症が残ることがあり、歩行障害から寝たきり状態へと移行する危険性があります。ですから、骨折予防も含めた脊椎骨粗鬆症治療が必要不可欠となっています。

脊椎骨粗鬆症の診断には、X線画像、骨密度測定、血液検査などを行います。脊椎骨粗鬆症と診断された場合、骨折がなければ主に薬物治療を行いますが、異なる特徴を有する種々の薬があり、それぞれの患者さんに合った薬剤の選択が必要となります。

骨折を伴う脊椎骨粗鬆症の場合は、手術治療が必要か、薬剤、装具などでの保存治療が可能かの判断が重要です。治療方針を誤れば予後の悪化を来し、日常生活に支障を来す結果となりかねません。骨折が治癒した後も、次の骨折を予防するための手段も講じなければなりません。

手術治療には、椎体形成術などの低侵襲手術から脊椎固定術などの金属製インプラントを使用した強固な固定を行う方法があります。骨折の程度、骨の状態によって術式の選択が重要となります。

滋賀脊椎センターの各外来では、脊椎骨粗鬆症に対する検査、診断、治療を行います。適切な治療方針を立て、定期的な検査を行いつつ、整形外科や近隣医療機関とも連携、協力しながら骨粗鬆症対策を進めていきます。

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